脳の健康を作り出す〜最新研究で分かった!1日1分の脳刺激の方法
こんにちは。健康オタクの佐藤まちこです。
今回お届けするのは「脳」そのものについてです。このコラムでは、認知症予防が簡単にできる方法をお伝えしておりますが、皆様はそもそも「自分の脳」について知っていますか?
毎日使っている「自分の脳」ですが、実はほとんどの人はよく知りません。なぜ知らないかというと、「脳」について学校教育の中で習うことは殆どないですし、大人になってからも「脳」については「病気」という視点で伝えられることも多く、なかなか「予防医学~生活に活かせる知識」が少なかった事実があるからです。
ところが最近は「脳の研究」が進み、予防医学に活かせることが次々と発見されています。そこで今回は、「脳についての最新研究」をお伝えします。改めて「自分の脳の可能性」にワクワクしてもられえばと思います。
そして最後に「1日1分でできる!脳刺激の方法」もお伝えしますので楽しみにしていてくださいね。
最新研究で分かった!「ラジオを聞くだけで脳が成長する」とは?
私たちの多くは、40歳近くになると「物忘れがひどく」なり、「あぁ、歳だなぁ」などと脳の衰えを実感することが多いようです。肉体の筋力が年々落ちていくように、「脳の力も落ちていくイメージ」を多くの方が持っています。もちろん力が落ちる部分もあるのですが、そもそも脳には「1000億個以上」の神経細胞があるといわれています。
年齢を重ねるごとに脳の神経細胞が減少するのは事実ですが、それは「脳が衰えるという事実」とイコールではありません。というのも、私たちの脳の形、1000億個以上の神経細胞は「日々変化」しているのです。
つまり、その人の「日々の変化=毎日の過ごし方」によって、脳の形はできていくということです。
実際、脳は使えば使うほど成長することがわかっていますが、最近の研究では「ラジオを聞くこと」で、脳の聴覚系と言われる「聞く部分の脳」が成長することもわかりました。
なんと、「ラジオ番組を2時間聞くことを1か月続けてもらった」ところ、「MRI画像で明らかにわかるほど脳が成長を遂げていた」ことが分かったのです!
なぜラジオを聞くだけで、脳が成長を遂げられたかというと、脳は使えば使うほど「神経細胞が軸手を伸ばしてネットワークを作る」からです。
脳は、後天的な環境や訓練によってよく使う場所があり、そこが発達しているケースが多いのです。
さて、「あなたの脳は、どのような「成長」をとげているでしょうか?」
実はこの質問は、「日々、あなたの日常、何をしていますか?」という質問に置き換えることができます。自分の普段の暮らしを振り返る機会は多くはないと思いますが、ぜひ今回のコラムを読みながら、ご自身の「暮らしの中身」も振り返っていただけると、それも脳の成長につながります。ご自身の日常の過ごし方を振り返りながら読んでみてください。
「頭が良い人」と「人生楽しく生きている人」、どちらが目標?
「頭が良い人」というと、良いイメージがあると思います。ですが、世の中を見ていると、頭が良かったのに認知症になってしまい家族が辛い思いをされているとか、頭が良かったのに、人生が楽しそうでない方もいらっしゃいます。
これはどういうことでしょうか・・・。
もちろん「頭は良い」にこしたことはありません。「頭が良い」には、いくつかのベクトルがあります。大人になって目指したいのは、テストの点数を取れる「単に頭が良い」ではなく、「人生を楽しめる頭の良さ」です。
テストで「点数を取れる頭の良さ」と「人生を楽しめる頭の良さ」は、脳機能的に見ても「全く別の部位が発達している」ことが研究で明らかになってきています。
「人生を楽しめる頭の良さ」を別の言葉で表現すると、無邪気な心や、スキルよりセンスが勝る脳の持ち主というイメージもあります。
実は「無邪気な心」というのは、脳の成長においてキーとなります。人の脳は誰でも「知っている」ものに興味を持てないという特性があります。(例えば、リビングの時計は毎日見ているけれど、デザインを書いてみてと言われても描けない=見ていないということはよくありますよね)
大人になるということは「経験が増える」ということですが、同時に「知っていることが増える」ということでもあり、それは「見ているようで見ていない」ということにつながります。
何をしてもわくわくしていた子供時代と違い、大人になると『知っているというだけで興味は落ちる』、これは脳の本能です。ですが「無邪気に今を楽しめる」心を持っていると、いつもの風景でも新鮮な視点で見られます。「気持ち」と「視点」は繋がっているのです。
よく経営者のインタビューの中で「遊びが大事」ということを仰っている方が多いのですが、それは「無邪気な心を日常的に使うようにする」ということを意識的にされているということだと思います。無邪気に遊んでいる時に、人は「知っているモード=興味がなくなる」にはならないですからね。
世界中の様々な研究でも「頭が良い人」より「人生を楽しめる人」の方が、健康で上質な脳機能をもっていることが明らかになっています。とはいえ、「無邪気でいる」ことや「スキルよりセンスを上げる」ためにはどうしたらいいのか、という具体策がわかりづらいですよね。今回は、この「人生を楽しむ脳」の作り方をご紹介します。
「人生を楽しむ脳」になる4つのポイント
結論から言うと、「人生を楽しむ脳」になるために大切な4つの脳の部位は、「見る」「聞く」「感じる」「動く」という機能です。この4つをバランスよく動かし、緻密に情報をやり取りする中で上質な脳が育つことがわかっています(もちろん年齢は関係ありません)。
最初に書いたように、わたしたちの脳は「使ったように成長」します。ですからスバリ「日常の過ごし方」で、この4つを意識することが、脳の成長を止めないポイントになります。
そして、「見る」「聞く」「感じる」「動く」の働きを統合し、最終的にひとつの感覚として認識するのは「感じる脳」という機能です。
「感じる」ということについて、おそらく多くの方が漠然としたイメージしか持てないと思います。見る、聞くなどに比べると、抽象的なイメージですよね。でも、この「感じる」という脳が、人間が人間でしか成し得ないものを作っているのです。
例えば「車の乗り心地」。これも自動車メーカーのテストドライバーが決めています。テストドライバーの方々は、車の形が1ミリ違うだけでも違いがわかるそうです。微妙な風圧やバランスの変化を、ハンドルやアクセル、ブレーキなどの操作を通じてわかるのだそうです。
こういったことは「誰でも今すぐにできる」ということではなく「日常の訓練の賜物」ですが、こういった「超感覚」を持たれている方はあらゆる専門分野にいらっしゃいます。自動車の他にも、宇宙ロケットなどの精密機械もそうです。
最後の仕上げは職人たちの鋭敏な感覚に頼って作られているなど、『人の感覚を機械は越えられない』ということは様々な業界で見受けられます。
車のスピードは数値で見えますが、「乗り心地」などというのは主観的で感覚的な世界なので、数値やスペックでは表現するのは難しいですよね。ですから、どれだけAIが発達しても「乗り心地」や「心地よさ」の判断は、人間に取って変わることはできないと多くの脳科学者が言っています。
人間が「心地よい」と感じているときは、わたしたちの「五感がすべて関わって」います。「五感」が関わっている・・・ということは「人間の肉体によって成り立って」いるということです。AIは肉体を持っていないので、感覚を正確に感知するのは難しいというわけですね。
私たちのだれもが「体と脳」の両方を持っているわけですので、それだけで、とてつもない可能性を持っていると言っても過言ではないのです。それを、伸ばすか伸ばさないかを、子どもの教育を親が考えるように、「自分が自分でどうするか」を大人は考える時代です。
人生100年時代。先はまだまだあります。
毎日暮らすだけで、最初にお伝えした4つの脳機能ポイントを意識するだけで、自分の脳力を上げることができるわけですから、ぜひ以下の4つの脳機能を意識するポイントを意識してみてください。
- 見る・・・今日の顔色は?なにか良いことあった?あるいは空の色なども。
- 聞く・・・相手の言わんとすることをきちんと聞く、受け流さない。
- 感じる・・・風の感覚、人の感覚・・・言葉にできないものも、感じる。あるいは、嬉しい、美味しいなどの感情を味わうのも、感じるということ。
- 動く・・・散歩する、走る、ストレッチする、人と会うなどなど。生きることは「動くこと」であり、動かなければ先の3つはできません。
この4つの機能をしっかり使うことが脳機能を上げることにつながるだけでなく、結果的に「人生を楽しむ脳」が作れるようになります。
簡単にできる、1日1分の「脳刺激」!
今回は「脳の可能性」と「脳機能」についてお伝えしてきました。AIの進化がニュースになることも多いですが、AIが人には追いつけない理由、人が持つ脳の可能性を実感していただけましたでしょうか。
また4つの脳機能を意識することをお伝えしましたが、「意識」よりもっと行動しやすいように、「1日1分これをやってみよう!」という提案を最後にお伝えしますね。
その1:決めた時間に「ラジオ」を聞く
研究で「ラジオを聞くと脳機能が上がった」とお伝えしたように、ラジオを聞くだけでも、脳のあらゆる部位を総合的に使うことができます。お勧めは、会話センスの高いパーソナリティーの番組を選ぶこと。
その方の話のリズムや言葉の選び方、相槌や質問の仕方など・・・ただ聞くのではなく、「会話のポイント」を意識するだけで、脳の活性度は何倍にも上がります。
「決めた時間」というのは習慣化のポイントなので、時間を決めてラジオを聞いてみましょう。
その2:気に入った文章や言葉を「手」で書き留める
子どもの頃、文章を書き写すという宿題があったと思いますが、これは理にかなった教育方法です。ただ書き写すだけでも、しばらくやっていると、その文章がいい文章なのか、センスがあるのかなどの判断軸がでてくるのがわかるはずです。
パソコンで文章を打つのも悪くはないのですが、お勧めはやはり「手で書く」ことです。手を使うことも「運動」のひとつとなり、脳を広く使うことにつながります。
また、手書きで「綺麗に書こう」と意識することも良い脳刺激ですし、実際、自分で書いた文章は「形」として脳に残りやすくなります。これを習慣にしていると、自分の文章センスも上がります。
その3:朝起きた時、思いついたことをメモする
朝の目覚めの状態は、脳にとって「クリアな状態」です。日中は、いろいろなことを考えたり、情報が入ってきたりするので、意外と大事なことを忘れたり、アイデアもなかなかでてこないことが多いのです。
ですから朝起きる前に、すこしボーッとリラックスして、夢想してみましょう。そこで浮かんできたものをメモにとる。そしてできるだけ早くそれを実行してみると、それは必ず自分の役にたつこととなります。
簡単なことですが、簡単なことほど「いつでもできる」と「やらない」のも人の脳の特性です。10年後、健康でいられるかどうかは、今日のちいさな積み重ねの結果になります。ぜひご自身の可能性を楽しみながら、1日1分、自分の脳に刺激をいれて脳を育てていきましょう!
お読みいただきありがとうございました。
*参考書籍:「センスは脳で磨かれる」著者:加藤俊徳(脳内外科・医学博士)